少し拗ねた唇の姫。
ふとした瞬間に、目が離せなくなる。 彼女の唇は、言葉よりも雄弁に機嫌を語っていた。 すねているようで、でもどこか嬉しそうで── その小さな表情の揺れに、心が少し奪われる。
会話の合間に、わずかに頬をふくらませる仕草。 意地を張っているのか、それとも誘っているのか。 その境界を見極めるほど、空気はやわらかく濃くなっていく。 まるで時間が少しだけ溶けてしまうような夜。
やがて笑みが戻る。 けれど、その笑顔の奥にまだ残る“かすかな拗ね”が、 何よりも愛おしくて、指先が少し震えた。 言葉にしないまま、視線だけで応える。 その沈黙の中に、ふたりだけの物語が流れていた。
長くは続かない時間だからこそ、 こうして思い出すたびに、あの唇の形がやけに鮮明で。 あの夜の光と呼吸を、 まだ胸の奥で確かに感じている。
―― ヒジ 🌙