あそびにっき

毛布のような姫。

―― 包み込むような温度と、静かなやすらぎ。


季節を先取りし過ぎた寒い夜だった。ふとしたきっかけで部屋に入った瞬間、空気に熱を感じた。照明の明るさでも、香りでもない。彼女の声のトーンと、ゆるやかな呼吸のリズム。まるで、ひざ掛けをそっと肩にかけられたような温もり。

会話はゆっくり。焦らせることも、間を埋めようとすることもない。沈黙があっても、それが“無音”ではなく“安らぎ”として成り立っている。彼女の前では、言葉を探さなくても成立してしまう。そんな不思議な空気。

印象的だったのは、笑う前に一瞬だけ見せる柔らかい表情。笑顔になるその手前の“ため”が、まるで毛布の端を持ち上げて包み込む前の予兆みたいで、そこに温度が生まれる。視線が合うと、微妙に目を細めてこちらを受け止めるように頷く。それだけで、空気が深呼吸する。

彼女の会話は飾らず、でもどこか調律されたように心地いい。声の高さもテンポも、すべてが「いま」の気温に合わせて調整されているようだった。長い夜の途中、部屋の中にふっと漂う静けさまでが、ひとつの演出のように思えた。

まるで毛布のような姫。やがてそれはますます熱を帯び、“包まれる幸福”そのもの。気づけば、寒さも疲れも彼女の中で果てたかのようだ。 次に会うときも、あのやさしい温度で迎えてくれるのだろう。

今日の余韻
言葉よりも、温度。
静けさの中で、確かに“ぬくもり”があった。

また会いたいと思う。寒い夜ほど、その笑顔を思い出すから。

―― ヒジ 🌙


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