ウインクの姫。

日常で、女性にウインクをされることなど、そうそうあるものではない。 フィクションの中にしかないような、そんな仕草。 目くばせとは違う艶やかさを帯びたウインクとなれば、なおさら希少だ。 それは自分の経験の乏しさなのかも知れないが——苦笑。

その日、昼下がりの姫。 かしこまって待機している他の姫たちをよそに、ふと目をとらえたのは
あまりにも自然に頬杖をつく姿。なぜだかドキリとした。 露出した少し幼くも見える顔立ち。薄く色づいた唇が、静かに笑う。 そして、こちらを試すような、シャクなくらい気取った声。

大人の込み入った質問を投げると、姫は少しだけ間をおき、 冷ややかに、それでいて悪戯っぽく——ウインクを返した。
返事などないくせに、それがじゅうぶんな答えだ、とでも言いたげに。 その意地悪なまつ毛に、もやつく心が撃ち抜かれたようだった。
ウインクひとつで口を塞がれたような感触。はぐらかされているのに、なぜかときめく。
姫にもてあそばれるような、心地よい時間が静かに流れていった。

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―― ヒジ 🌙

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